五色と二次の海につかる、日記

俳優/劇作家/アニメライターの細川洋平による日記・雑記です。

「諦められたアイドル:新生アイドル研究会BiSの場合」

BiSのマネージャーである渡辺淳之介さんがインタビューでこんなことを言っています。

ーーもう一回聞きますけど、本当に解散するんですか?
渡辺 : するする。
ーー3年もやっていたらBiSというグループへの愛着もあるでしょ。
渡辺 : ない。本当にないんだよな。自分でもビックリするんですけど、BiSっていう入れ物にはまったく興味がなくて。
ーーそれでも、過去を振り返ると、気持ちがぐわってならない?
渡辺 : 真面目な話、なくて。ぶっちゃけ。ぐわっとなるとしたら終われないことの方がなりそうですね。終われば終わったで泣いたりとかはあるのかもしれないけど。
ーー淳之介さんは解散後のことは考えているんですか。
渡辺 : アイドルをやっていてもおもしろかったんですけど、飽きっぽいんで、いろんなことをやりたいですよね。
ーーうーん。いまBiSはサブカル寄りのアイドルとしてはトップに並ぶ位置にいるわけじゃないですか。それを解散させるのは惜しいと思わないんですか?
渡辺 : ぶっちゃけ、それがBiSの限界かなと思っていて。
ーーそれをマネージャーが言っちゃダメでしょ。
渡辺 : いや、全然おもしろくないの。これは真面目な話、全然おもしろくないか
ーーそれは古参の研究員さんたちからも少なからず聞こえてきますよね。
渡辺 : 全然おもしろくないから、しょうがないでしょ。とはいえラストスパートは楽しませられると思いますよ。

BiSは解散に向けて、再びおもしろさを取り戻せるのか? 渡辺淳之介インタビュー/オトトイ)


マネージャーから諦められているアイドル。
それって、どういうことなんでしょうか。

BiSはとても好きなアイドルです。
だからあーだこーだと考えてしまいます。そして書き散らかしてしまいます。

そもそもこんなことを書こうと思ったきっかけがいくつかあります。
まず、話題になった全裸PV。そして相次ぐメンバーの脱退。音楽の方向性。ライブ現場の熱量。研究員。マネージャーのジュンジュン(渡辺淳之介)さん。チェキ会。握手会。仕掛け。オトトイの学校。

9月のZeppDiverCityTokyoでのワンマンライブを最後に、今のところBiSの現場には行っていません。いろいろあって単純に行けてないだけなのですけど。
初めてのBiS現場が2013年5月26日の「BiS48」。現在ソロアイドルとして活動している寺島由芙(当時テラシマユフ/通称ゆっふぃー)が同日お昼のライブ「BiS4」をもって脱退し、新メンバー3人を迎えた6人体制で新たにスタートを切ったライブでした。ほとんど作法もなにも知らないまま、ゆっふぃーが見たい!と思いチケットを応募するも「BiS4」は取れず、だったらBiS見るだけでも!と「BiS48」をゲットしたのでした。

以前にも書いたかもしれません。

モヒカンや多数のピアス、タトゥーがバリバリ入ったパンクスやキッズから、見た目普通の人々まで幅広い客層が会場のCLUB ASIAに集まっていました。ライブが始まると異様な熱気でモッシュやダイブ、リフトが頻出し、およそアイドルのライブとは思えませんでしたが、楽曲から入る分には、違和感はもちろんありませんでした。
メンバーの名前をコールする場所では、新メンが誰だかみんな知らない。だから「誰か!誰か!」とコールしていました(笑)。すごくオープンで開かれた世界だなと感動しました。今でこそ名曲「Primal.」のサビで嬉々として両手を挙げて後ろを振り返りますが、当時はみんなが突然後ろを振り返るさまを見て、驚いていました。

それから自分でもびっくりするくらい現場に通い(全通する人もいるので、そのレベルには全然足りませんが)、どんどんBiSのことが好きになっていきました。あと、研究員(BiSファンの総称)も。アイドルとファンが、ぶつかり合って、すごくいい空間・関係だなあと思いました。

そんな中で、BiSの歴史をネットであさるように集め、マーケティングやメンバーの脱退、BiSというグループに対するメンバーたちの言葉をインタビューなどで知っていくうちに、ふむ……、と思うようになりました。

BiSにぼくがものすごく惹かれたのは楽曲でした。『BiSimulation/Hyde Out Cut』がすごく、ものすごく好きで、しかもHyde Out Cutの方は、持病再発の体調不良で脱退するメンバー、ワキサカユリカ(通称ワッキー)のための曲だとか。脱退するがわかっているのにワッキーのソロパートまである。そこの物語性に胸を打たれました。
聞く度に、ワッキーのまっすぐな歌声に涙ぐむ日々でした。(現場に行く前です)


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ワッキーラストライブ。at 両国国技館

それから、ゆっふぃーが抜けるとツイッターで知り、あのエモーショナルな歌声を持っている子も抜けちゃうの?!と驚き、現場へ行こうと決意したわけです。
ゆっふぃーの脱退の理由というのは結局ぼくにはわかりません。メンバー内でうまくいかなかった、とか、ジュンジュンさんのマーケティング戦略について行けなかった、とか、そういう話をたくさん聞いたり見たりしました。いろんな話がでるということは何かがクリティカルに引き金となっているんじゃないんだな、という感じです。いろんな要素が絡まって縺れていったものが、いつの間にか全然ほどけなくなってしまった、みたいなものなのでしょう。

かねてから、ジュンジュンさんはBiSはプー・ルイのグループだと言っています。そして2014年に武道館公演をもって解散するとも。

ただ、事態は変わるものだし、たとえばもっともっと人気が出れば「解散」も撤回されるかも知れない。研究員のみなさんもおそらくそういう希望があると思いますし、ぼくもそう思ってライブに通っていました。
「どうぶつえん」(ファンクラブ)に入会し、どんな形であれ応援できたらしたい、と思っていました。

だけど気づけば足が遠のいています。

「どうぶつえん」でライブのチケットが手に入りやすくなりました。たとえば「どうぶつえん」先行販売されたシェルターライブ七日間通しチケット。Tシャツ付きで二万円。ZeppDiverCityTokyoのワンマン、限定グッツ付きのチケット、一万円、三万円。どうぶつえん限定イベント、一万円。ちょ、ちょ〜。太い客優待〜。なんだかそういうので、テンションをごっそり持って行かれてしまいました。いろいろ考えるとお得ではあるのかも知れませんが、金額が大きいんですよね。自分にもっとお金があれば違うんでしょうけど……。
先日のVILLAGE VANGUARDとのコラボ福袋もツイッターで賑わっていましたが、ひとつ五千円。当たりには限定ライブのチケット入り。買える人は当たるまで買い続けたようです。VV選定の福袋とのことで、内容物はそれか〜!という代物ばかり。もしチケットが当たらなくてももらってうれしいものだったら急いで買いに行ったかもしれませんが、やっぱりそこまでできない自分がいます。

ライブに行くまでの(精神的/金銭的)ハードルがどんどん上がってます。

個人的には、ライブのクオリティーを上げてもらい、先のでんぱ組のエントリで書いたように、パフォーマンスの精度をもっと上げて、照明などをタイトにしてくれたら、ぜったいもっともっといいライブになるし、お客さんももっと入ると思うんだけど、などと思っています。

BiSのパフォーマンスは、でんぱ組とは正反対の場所を目指しているものだと思います。
でんぱ組が、異世界(ポップカルチャーの一面)を見せるライブだとすると、BiSのライブは、現状を打ち破る衝動、を見せるもの、じゃないかなと思っています。
そもそも音楽のジャンルやアプローチするクリエイターがAIRJAMゆかりの人たち、90年代後半に若者を風靡したメロコア/メロパンの有名なアーティストです。それにBiS楽曲の屋台骨ともなっているサウンドクリエイター松隈ケンタさんの作る情動的な楽曲。それらは「規則やルール」に抗う力を持っている音楽です。だからファンたちにもそんな人たちが集まるし、ダイブもモッシュもする。BiSのメンバーたちに対しても、感情を爆発させる余地を残しているが故の、他のアイドルからするとちょっとゆるめの振り付けなのかなと思っています。振りもいいけどライブしよう、みたいな。古いですが、「戦う」場所がライブなのかなと。

「壊す」瞬間が見られるライブ、なんてゾクゾクするだろう。
全身全霊、というものが幻想だと思うなら、それでいいですが、もしそんなライブがあるなら、BiSでその、ぶっ壊れるくらい、ぶっ壊すくらいのライブというのを見ていたいです。それをたぶん、どこかに期待しながら、見に行っているのだと思います。ダンスで整列なんてしてる場合じゃないぜ!みたいな。
だけど、そうなるとスポットの位置も決められなくなるので、タイトな照明の部分は絶対にはずさず、その中で壊す、とか、以外の部分で、とかあったらすごい盛り上がるだろうなと思います。

最初にジュンジュンさんがBiSをすでに諦めている発言をしたインタビューを引用しました。
もう打つ手なしなんでしょうか。いや、『ラストスパートまでは楽しませられると思いますよ』と言っている以上、きっとそうなるんだと思います。じゃあ何?ぼくは何をBiSに求めているんでしょうか。

ジュンジュンさんのインタビューでもあるように、「アーティスト」と「アイドル」は全く違う存在です。平たくいえばアーティストは自分自身の哲学・美学に基づいて活動している人。アイドルはプロデューサー/仕掛け人の哲学・美学に基づいて活動している人。BiSがアイドルだというのなら、プロデューサー=渡辺淳之介の哲学に基づいて活動するほかないという事になります。現に本人がそう言っているのなら、BiSはそうである以外ない。

現在のBiSメンバーは、すでに出来上がっているBiSというイメージに自分がどう当てはまるか、それをまだ模索しているのではないかなと思います。(最近ライブ見ていないので全くの推測ですけど)。BiSという容れ物は2010年に出来上がり、アルバムを出した時に在籍していた5人、プー・ルイヒラノノゾミテラシマユフ、ワキサカユリカ、ミチバヤシリオの時点で、グループとして一度完成した。その後、容れ物だけを残し、メンバーは半数以上が入れ替わります。BiSはどこにあるのでしょうか。

BiS=プー・ルイであるなら、2014年に始動したバンド「LUI◇FRONTiC◆松隈JAPAN」はいったい何なのか、説明がつかなくなります。プー・ルイはBiSであり「 LUI◇FRONTiC◆松隈JAPAN」である。でも 「LUI◇FRONTiC◆松隈JAPAN」はBiSではありません。
ではBiS=渡辺淳之介かというと、それも違う。BiSを組織し、仕掛けた本人ではあっても、BiSそのものにはなれません。BiSとして表明することがジュンジュンさん個人ではできないからです。

それならBiS=楽曲では?これはしっくりきそうです。BiSという容れ物は楽曲が担っているものであって、メンバーの誰も担っていないのだ。そう考えると、今の現象はとても腑に落ちます。

BiSの振り付けはどうなるでしょう。
極論を言うと、全部変えてしまってもいいんじゃないのかな、と思っています。
現在のBiSメンバー、プーちゃんとのんちゃんを除いたメンバー(ファーストサマーウイカカミヤサキ、テンテンコ、コショージメグミ)が、BiSの過去の容れ物をなぞっていると感じているからこそ、自分の立ち位置やキャラクター、参加意識に悩んでいるのだとしたらですけど、全部ぶっ壊して、作り直せばいいじゃないでしょうか。

今までのBiSはそうしてきて、自分たちのものとして、アルバムを一枚作ったんだろうと思います。

だったら、誰かの代わりではなく、「そこに立つ」ために、壊して作り直すのがいいんじゃないか。もちろん簡単なことではありませんし、書くだけなら誰でもできますし、そんなことしなくてもいいかもしれません。だけど、もしメンバーが自分の存在に不安があったまま、ラストスパートに入ろうとしているのだとしたら、それってすごくもったいないことではないかなと思うわけです。

ステージに立つ以上、誰かに遠慮しながらなんてもったいないし、そういう部分はきっと伝わってきます。「BiSを見て!」じゃなくて、「BiSにいる私を見て!」というパフォーマンスが、内側からの爆発になるんじゃないかなと思います。

BiS最古参(TO)のtumaさんがツイッターで「現状映像が見られるBiSの最高のライブは赤坂BLITZだな」と言っていたので、慌てて調べました。ぼくは今まで見たことがありませんでした。え?それどこに入ってるの?
そしたら、『DiE』の初回盤に入っていました。ぼくが最もBiS現場にハマっていた時期で、映像を見るより現場へ!となっていたため、購入はしていたものの見ていませんでした。
今日やっと見ることができました。

ステージに立つBiSの5人。プー・ルイヒラノノゾミテラシマユフ、ワキサカユリカ、ミチバヤシリオが、「BiSを、私たちを、私を見て!」と全身で訴えているようで、とてもよかった。それから、ああ……、もう、このメンバーでは見られないんだな、とかおセンチになり、泣きました。

今のBiSでも、こんな全身で訴えるようなライブは見られるはず。そのためにどうなったらいいのかな、を頭ん中でコネコネ考えたのが以上の文章になります。

すごく長いわりにダラダラと、失礼しました。
ちょいちょい読みやすく修正などしつつ、更新していきます。

「すごくいいラストライブだった」と思えるように、ぼくも心構えや予習をまたして、それまでも行ける現場には行きたいと思います。

1月29日にリリースされる『STUPiG』はめちゃくちゃいい曲!PVも大好きです!


(↑サイズがうまく行かない……)

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