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五色と二次の海につかる、日記

俳優/劇作家/アニメライターの細川洋平による日記・雑記です。

最近『フリクリ』を見たのであんまりネタバレしてない感想を書いてみます。

またしても最近見ました。

今期『キルラキル』で活躍されている今石監督も参加されていた『フリクリ』に関して、メモ的な感想を書こうと思います。またしても当時のレビューや感想を参考にしておりませんのであしからずです。

まず、『キルラキル』は『天元突破グレンラガン』や『パンティー&ストッキング』などを手がけたチームによる新作で、GAINAXから独立した方たちが立ち上げたTRIGGERという会社のTVシリーズ第1弾です。
脚本は劇団☆新感線中島かずきさん。ぼくは(いちおう現在も)俳優もやっており、妙な(そして一方的な)親しみがあります。『髑髏城の七人』好きです。

キルラキル』の感想はまた機会があれば。

フリクリ』は2000年の作品。個人的な感覚では2000年って最近なんですけど、もう13年前なんですね……。光陰矢如也。『ふしぎの海のナディア』で初めてGAINAXを知ったぼくはその後の『エヴァンゲリオン』できっちり衝撃を受け、GAINAXに行けばこんなすごい世界が作れるんだ、と考えていたこともありました。
ですが、大学に入学してから演劇漬けになりアニメを見なくなりました。この時期がちょうど『彼氏彼女の事情』『フリクリ』と重なります。
エヴァのブームはまさに社会的でしたから、その後、アニメ誌だけではなく、ファッション誌にもアニメ(ほぼエヴァ)を取り上げるコーナーがあったりしていました。
フリクリ』もその文脈から知りました。『the pillowsが主題歌を担当』『エヴァを作ったあのGAINAXが制作』『おしゃれ』というキーワードが目に付いた記憶があります。

  • 舞台俳優が声優を

彼氏彼女の事情』で劇団ナイロン100℃新谷真弓さん、劇作家/小説家として今活躍している本谷有希子さんが声優として参加し、ぼくの周辺でもそれは「すごいねえ」と話題になっていました。『フリクリ』でも、引き続き新谷さん、遊園地再生事業団宮沢章夫さん主宰)などに出演されている笠木泉さん、大人計画松尾スズキさん、ナイロン100℃大倉孝二さんなどが参加されています。

  • もし難解とするならば

しばしば、作品が難解だという意見を目にします。実はキャスティングからもそれは導き出されているんじゃないかなと思います。というのも、声優さんの演技はご存じの通り俳優のそれとは似て非なるもの、言ってしまえば全く別です。深く触れなくともここら辺は数多く論じられているので十分共有できている事項かと思います。
フリクリ』は、テンポがよくスタイリッシュなカット割りや痛快なアクションでひたすら「すごいなあ」と思わせてしまう作品ですが、漂う『浮き世離れ感』は、天才的な作画陣や、少女革命ウテナスタードライバーを手がけた榎戸洋司さんのシナリオから立ちのぼるだけではなく、耳慣れた『アニメ的な演技』が『ない(あるいはあまりない)』からだなと思った訳です。
身体言語は使われず(アニメですから)、音声のみで感情を伝えるという演技方法がとられていない分、ある種抑制の効いたセリフたちは『セリフ以上の意味を宿す』ことになります。
たとえば『怒りのセリフ』をアフレコの技術で演じられたものと、身体(表情やしぐさなど)を通して語られるもの。その二つの情報伝達量は同じであっても、周波数のような部分が異なります。つまり『声』『体』『表情』と、三つの周波数の内、アニメで伝わるのは『声』の部分だけ。『体』と『表情』の周波数はカットされてしまうわけです。
すると『怒り』を声だけで『10』伝えられる演技と、『3』ないしは『4』(もっと多いこともあるかもしれませんが)、つまり『9』以下の演技では『怒り』の伝達量が変わってきます。人間(視聴者)が他者の感情をどのような場合でも合計『10』で受け取るのであれば、『10』に達していない怒りのセリフは『怒り』ではない感情で補完されてしまう場合も出てくるわけです。その余白の部分、それが、今作をさらに難解にしているんじゃないか。そんな印象を持ちました。

もちろん、それだから『いい/悪い』を論じているわけではなく、だからこそ、『フリクリ』には独特の空気感が宿るわけです。

  • 物語の軸を3本用意してみる

アニメ評論家の藤津亮太さんが開催されている講座『アニメを読む』で今夏、『フリクリ』が取り上げられて、その時藤津さんがツイッター『人に軸を置いて見るとすっきりする』というようなことを呟かれていたのを記憶しています。ぼくはその講座に参加しておらず、その言葉を念頭に置いて、今回視聴しました。

タッくん(ナオ太)とマミ美とハル子。それぞれの物語として見ると確かにギミックに目を奪われずに比較的すっきり見られました。

  • タッくんの失恋の話

兄の元彼女に付きまとわれ、相手をしているけど、自分には別に好きな人ができる。年齢差から来るコンプレックスにより大きく踏み出すこともできず、結局失恋してしまう。ナオ太の『この町からでることもなく』といったセリフから、ふと『惡の華』を連想しました。パッと見全然関連ありませんが。

  • マミ美の自立の話

海外に去ってしまった彼氏を忘れられず、面影を弟(ナオ太)に重ねている。けれども結局ハル子に心をよせていくナオ太を追わず、一人姿を消す。

  • ハル子の話

行動原理が物語の転がり方としてはおもしろいけど理解するのは難しい。ハル子は、自分の望みの為にナオ太を利用している。ナオ太を町から連れ出さず、ある存在を追って地球を去る。

  • こうしてみると

並べてみると、三人の自立の物語とも見えます。その場に留まることは依存すること。解き放たれたときに人は旅立っていく。そうして考えると最終話の最後、(年齢的なこともあるけど)町に留まっているナオ太は、やっぱり誰かに依存しているのかも知れません。最後の自動販売機前のシーンで、マミ美とかつてしたように、同級生とジュースを回し飲みしようとしているところからも。

  • 作画がおもしろい

とにかく頭おかしいんじゃないか、というくらい、作画が凝っています。凝っているというか、おかしいというか。スタッフは鶴巻和哉(監督)、庵野秀明貞本義行平松禎史摩砂雪今石洋之磯光雄吉成曜などなど。固唾をのみそうな面子です。第1話(第5話(?)にも)のコミック風のシークエンスもびっくりしました。

  • おもしろすぎてかえって見えてくる難しさ

作画がとにかくすごくて眼福でした。同時に見えてくるのは、ギャグとシリアスの切り替えの困難さ。もしくは世界観のルールの部分です。
フリクリ』には「このノリの時はギャグ、じゃないときはストーリーテリング」という明確な線引きがない為、どのカットも同じテンションで見てしまい、視聴者側からの情報の取捨選択は難しくなるのかなという印象です。それが読み解きづらい部分でもあると思います。とはいえそもそもが『読み解かれる』ために作られていないでしょうから、そこは純粋に楽しんだ方がいいのだろうと感じました。

セリフのある、長い長いPVと考えるとすっきるすることもあるかも知れません。この関連に関してはまた、別の機会に。

  • アニメのディレクターズレーベル

しばしばクリエイターが(昔ですけど)『ディレクターズレーベル』(海外のPV作品集)を参考にしていたりするように、『フリクリ』にも発想のカギがゴロゴロと転がっています。何かに詰まったときや、頭を解したいときにはボケッと見たい作品です。
ちなみにディレクターズレーベルは先日の宮地昌幸監督のトークイベントでも言及がありました。スパイク・ジョーンズミシェル・ゴンドリークリス・カニンガムアントン・コービン、マーク・ロマネックなどの世界的なクリエイターの映像作品集。ぼくもいくつか持っています。一見の価値あり、オススメです。

  • 余談ですが、大倉さんの声

アマラオ役の大倉孝二さんの声、清川元夢さんを若くしたような声だなと思いまして、ちょっと興奮しました。

  • 海外で評価が高い

ここはさっきWikipediaで見ました。海外で評価が高い理由って何だろうと考えて、一つ思い浮かんだのは、ゲームです。
今年、日本ゲーム大賞2013で『ゲームデザイナーズ大賞』を受賞した『The Unfinished Swan』。真っ白な画面に黒いペンキ玉を投げていくとペンキが広がり、風景が浮かび上がる、という前衛的なゲームです。あるいは『ICO』『ワンダと巨像』『風ノタビビト』といった、クリエイティブで意欲的な作品というのは海外がものすごい熱狂します。FPSパズルゲームPORTAL』もしかり。既存の枠を飛び越えるような作品に対して大歓迎の土壌ができているからこそ『フリクリ』もまた、大いに受け容れられたのかなと。プレイヤー、視聴者に様々な発見がある作品。

何層にも用意されたギミックは見る度に新しい発見がある。物語の成分を感受する楽しみとは別で、目の前に繰り広げられる出来事を楽しむというのも、いいなあと思わされる作品だなと感じた次第です。

フリクリ』に関してはこの辺で。

フリクリ FLCL Blu-ray BOX (PS3再生・日本語音声可) (北米版)

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↑海外版には鶴巻監督のコメンタリーが収録されているそうです。