五色と二次の海につかる、日記

俳優/劇作家/アニメライターの細川洋平による日記・雑記です。

「アイドルのステージング:でんぱ組.incの場合」

2014年ライブはじめは、でんぱ組.incのZeppDiverCityTokyoワンマンライブでした。

でんぱ組を見るのは初めてで、昨年頭に行っていたZeppTokyoでのライブに行けなかったのが特に悔やまれており、今回念願かなって、といった形での参戦となりました。昨年頭のライブというのはWWD発表直後に行われたライブで、レポなどでも見られるように、メンバー一人一人が自分の過去を語るMCを挟んだ上でのWWDという、非常にエモーショナルな演出で観客を魅了したと聞きます。

MARQUEEブログ参照
古川未鈴オフィシャルブログ『みりんに向かってBダッシュ!!』「ZeppTokyoワンマンについてくわしく」

今回は2ndアルバム『WORLD WIDE DENNPA』リリース記念の全国ツアーとのことで、東名阪(福岡)Zeppに加え、全国各地のライブハウスを回るものになるようです。ぼくが行ったのは1月5日。ツアー2日目でした。

決して同列には語れないでしょうが、舞台にも初日があり、千穐楽があります。初日というのは観客の反応がどうなるものなのか、未知数の中で行われるのでとても緊張します。演じていく中で、各パート、各シーンがどういう受け止められ方をしていくのか、演者にとっても発見に溢れています。2日目は、初日のリアクションを踏まえた上で進められるため、リラックスと緊張の程よい交わりの中で本番に臨めることが多いというのが実体験を経ての感想です。

でんぱ組も同じだったようで、メンバーがMCで「昨日は緊張してヤバかった」と言っていました。人前に出てパフォーマンスをする以上、緊張しないなんてことはありえないでしょうが、初日の緊張は他の日とはことなるものがあるのです。

ライブ自体はアルバムの曲を中心に、というか、ほぼ全曲パフォーマンスし、途中にその日担当のメンバー(1月5日はねむきゅん)のソロ曲が一曲入る、というものでした。
2階席にはイスがありましたが、1階はオールスタンディング。どうなるかな、と思っていましたが、想像以上にいいライブでした。

Zeppクラスでのアイドル・ワンマン・オールスタンディング・ライブをぼくは三度しか経験がありません。2013年9月のBiSと、2012年11月11日の私立恵比寿中学『ウィンターデフスター極上ツアー』第二部『文化祭』です。そのうち、エビ中のライブ中に、後ろのお客さんに強めの肘鉄を受けたことから「オールスタンディングライブのイヤな経験/イヤな会場」として記憶に残ってしまったのです。BiSはライブがパンク・メロコアなどのスタイル(ダイブ・モッシュが普通に起こる)なのでオールスタンディングじゃないと、と思っているのですが、サイリュームをきっちり振って、コールをちゃんとして、というライブでは、オールスタンディングは逆に怖いなあと思うようになってしまいました。特にすごくきっちり応援したい古参の前にもし自分が来てしまったら、中途半端な応援やコール、タイミングのずれたサイリュームというのは目障り(?)などと考えてしまうのです。もちろん、そういうことのないようにきっちり予習していけばいいんですけどね……。

でんぱ組のライブでもそんな心配をしつつ、それでも前の方で見たい!と思い、最前ブロックに行きました。すごくすごく楽しかった。おそらくぼくと同じく新規組が多く参戦していたからだと思います。古参の人と新規と、ほどよいブレンドになっており、コールも窮屈じゃないしサイリュームを振るタイミングもももクロほど「やべ!」とならない。予習というか、曲を聞き込んでいくことはもちろん前提にはなりますが、曲をちゃんと聞き込んでいけば、サイリュームを振るタイミングはわかってきます。
〈※ライブ会場で買った緑(ねむきゅんカラー)と赤(みりんちゃんカラー)のサイリュームは1時間も経たずに力尽き、最終的にはプラスチックの棒を振っているだけになりましたので、ペンライトでなく、サイリュームを用いる場合は各色三本くらいご用意ください〉

ちなみに冒頭で書きました、2013年1月22日のZeppTokyoワンマンで初お披露目された「ORANGE RIUM」では、文字通りオレンジのサイリュームが灯され、個人的にはももクロの「走れ!」の暗転中のサイリュームに匹敵する、ファンと会場と、メンバーが一体になった素敵な曲だと思います。オレンジのサイリュームは会場では最初に売り切れる色らしいです。前もって準備して行くことをおすすめします。

(↑DVDになっている大阪城野外音楽堂ライブので『ORANGE RIUM』。涙)

夢眠ねむオフィシャルブログ『ユメミる世界日記』「ワールドワイドでんぱツアー2013 in ZEPP TOKYO」

でんぱ組の曲はBPMが高いので、コケティッシュな振り付けも想定以上にはいやらしくならず、コミカルに昇華されます。時おりオタ芸を挿入したり、「でんでんぱっしょん」では新体操のリボンが取り入れられたり、次から次へと展開して行くダンスは見ていて全く飽きません。電波ソングに「でんぱダンス」。見ていてとても気持ちがいい。

どうしてこんなに気持ちがいいのか、ちょっと考えてみました。

【角度が揃っている】
当たり前なんですけど、6人の肘や腕、膝の曲げ方、ほぼ角度が同じです。揃える部分は揃える。基本でありながら達成されるにはそれなりの練習と意思疎通、共通認識が必要になります。

【速度が揃っている】
これも当たり前ですが、腕を回したり足を運んだり、それらのスピードが同じです。角度と同じく自分の速度と他のメンバーの速度を主観的、客観的に把握している必要があります。個人的にゾクゾク来たのは、ライブの一番初め、暗転中に6人が舞台袖からステージへ歩いてくる瞬間です。全員整列し、等間隔で足早にステージへ現れます。そこには、「照明が当たるまでアイドルははじまらない」「照明がついたらもう、後戻りはしない」という強い意志を感じ、胸が熱くなりました。そこまで気を配ってステージングがなされています。

ダンスが物語】
ダンスにそれほど詳しくないくせに書きます。ダンスにはいくつかの型があり、組み合わせることでレパートリーを増やしていきます。ぼくが知っているのだと、ボックス。くらいです(笑)。誰でも知ってるか……。ステップでボックス踏んで、上半身でこれをする、という形でダンスは組み合わされていくのだと想像しますが、歌に対する振り付けではそれと同時に、歌詞との符合という課題が出てきます。歌詞に合わせるのか、あえて無視するのか。歌詞の物語に則って振り付けるのか、多少歌詞を無視してでも曲調に合わせて踊るのか。振り付け担当の方の裁量によるとは思いますが、バランスがとてもいいです。立ち位置、移動、フォーメーション、マイム、いろんな方法を使って視覚的に「でんぱ組.inc」を伝えようとしているのが手に取るようにわかります。

おお〜、と思ったのは、BiSとのツーマン。ぼくは現場に行けなかったのですが、幸い『WORLD WIDE DENNPA』のDVD付き初回限定盤にBiSの「IDOL」をカバーしたライブ映像があり、その曲だけでも見ることができました。完全なでんぱアレンジ。イントロで、一人ずつ、一歩一歩進みながら指さしをしていく振り付けに鳥肌。そもそも「IDOL」はハードコア/レイブメタルな曲で、BiS楽曲の中でも無数のダイバーが発生するキラーチューンです。その文脈をも加味してのその振り付けか!という感動がまず生まれました。終盤での、円になってマイクを顔の高さに持ってくる振り付け。メリーゴーランド!ゆっくりと交互に上下していく6人は夢の中にいるかのようです。そして激しくヘドバンしていたかと思うと、ふとストップして目が覚めたような表情。そこここに表現/感情が溢れていました。それは「振り付け」でしかないかもしれません。本人たちは「そのように振りを踊っているだけ」かもしれません。それで十分。曲を曲以上に音楽として伝える彼女たちに、(しかもいとも簡単にやっているように見えます)深いため息が。

【歌がうまい】
ライブではみんな生歌なんですね。そして、うまい。下手ではない。ソロパート、各キャラが立っていて、すごくうまいメンバーがいて、突出して下手な人がいません。ぼくにはみんながうまく聞こえています。だから気持ちいい。

↑ライブを見ていて、いい!と思ったのはここら辺りです。

あとはスタッフワークもいいなあと思いました。照明が特に。6人がステージに立った時に、ちゃんとスポットが当たること、しかもかなりタイトな明かりであることはとても重要だと思います。照明は立ち位置やタイミングがきっちり決まっていないとバシッと作れません。こういう部分で臆せずスポットをバンバン使っているのを見ると、「すごい、作り込んでるなあ!」と思います。照明がぽわんとゆるいとどうしても視覚的にも印象的にもぼんやりするので、見ていてあまり感動しません。

初めてでんぱ組.incのライブに行きましたが、本当に行けてよかった。(東京ではZeppもソールドアウト。他の地域ではまだチケットあるそうです!)

サプライズで日本武道館公演が発表になりました。びっくりと感動と涙と、が入り交じる中、確かにもがちゃんは呆然とした印象でした。感動というより、戸惑いだったんですね。それはもがちゃんのブログに綴られておりました。

最上もがオフィシャルブログ『もがたんぺぺぺ』「暗い話」

ほんの一瞬、たった一時間半、同じ時間を過ごしただけのぼくには計り知れない苦悩や葛藤もあると思いますが、とにかく、とにかく、ひとつの通過点として、日本武道館公演を成功させてほしいなと思いました。そして、きっとパフォーマンス的には大丈夫なんだろうなと。あとは、集客。ここはもふくちゃんが!ぼくも行けたら行きたいです。

ちなみに2ndアルバム『WORLD WIDE DENNPA』はすごくいいアルバムですので、ぜひ聞いてみてください!

というところから、次のエントリではBiSの話へ。