五色と二次の海につかる、日記

俳優/劇作家/アニメライターの細川洋平による日記・雑記です。

2013年を振り返ってみるけど、総括とかはしないでみる。

あけましておめでとうございます。
昨年ご来訪いただいたみなさま、本当にありがとうございました。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

  • アニメ映画見たリスト2013

けっこう見たという実感もあるのですが、見られなかったものもあり。「劇場版 銀魂」などがいい例で、とても評判がよかったのになぜ見逃したのか、という。劇場で見たものをザッとリストアップし、簡単な感想も沿えてまいります。

  • 「AURA 〜魔竜院光牙最後の闘い〜」

2012年の「中二病でも恋がしたい!」大ラスのナレーションに悶々としてしまって、いろいろ調べていたら、「中二病」を扱った作品があると知り出会ったのが「AURA」(ガガガ文庫)でした。「人類は滅亡しました」の田中ロミオ著。原作に感動。劇場版も鑑賞。キャラクター原案はmebaeさん。mebaeさん独特のフェティッシュな雰囲気を出すのはそりゃ難しいだろうとは思いつつ、ストーリー、押さえる部分はしっかり押さえていて満足。原作同様中盤〜終盤の息も詰まるような展開がとても好きです。

「花咲く〜」はTVシリーズがキラキラ輝いており、かなり感情移入して見ていた作品でした。どうなるかと不安もうっすらあった劇場版も、フタを開けてみれば実に濃密でした。上映時間は70分弱。その中に様々なエッセンスが破綻なく丁寧に盛り込まれていました。緒花が菜子の代わりに泣き出すシーンで「お前が泣くなよ!(笑)」と心で突っ込みつつ感涙。「走り出す」っていいですね……。

新海誠監督最新作。こちらも60分の中編。いろはと同じく実に濃密な作品でした。「星を追う子ども」にいまいちピンと来なかったので、果たしてどうなるんだろうと思っていましたが、微妙にすれ違う心と心象風景としての新宿御苑の雨の描写がひたひたと胸に染みわたりました。改めて、「雨って美しいな」と感じられる国に生まれてよかったなあ実感しました。新海監督にはこれからも季節を描いていって欲しいなと思います。

  • 「ハル」

木皿泉脚本、WIT STUDIO制作ということでとても期待していた作品でした。各パートは盛り上がっていたし、ラストへ至る感情曲線の描き方もとてもうまいなと思ったのですが、いまいち乗り切れず。気のせいかも知れませんが、途中に出て来るキリンの像の縮尺がカットによってまちまちだったような……。そういうディテールが気になってしまったのと、キャラクターの描写がちょっとステレオタイプかなと。特に喫茶店でくるみが泣くシーンでは「ここでそういう泣き方はしないんじゃないかな」という気持ちが生まれてしまいました。全体で見ると間違いなく狙った(作品として正しい)演出だと思うのですが、違う選択肢で見たかったです。あーだこーだ考えつつも鑑賞後の満足度はけっこう高かったです(笑)。

3DCGすげえ!というのが率直な感想です。「スターシップトゥルーパーズ インベイジョン(STi)」もすばらしかったですね。ただ、STiハーロックでの大きな違いは、たぶんですが、無機質なものを描くか、有機的なものを描くか、という部分だったと思います。ハーロックは有機的なものをCGで描くということに果敢に挑戦している印象でした。また、世代的にネイティブで松本版ハーロックに憧れを持っていないので、上の世代の方々とは違う見方になっているだろうとは思います。

宮崎駿監督は本当に引退してしまうんでしょうか?

第一章はDVDで。第二章は劇場で。TVシリーズとは監督も脚本も違う、だけど見事にコードギアスでした。CGとなったKMFが動く動く。カメラワークも非常にアクティブになり、ロボットアクションものという観点でも実に満足のいく作品でした。そして何と言っても「コードギアス」の名を冠するからには、な展開が。第三章はよ……はよ……。

凸守と六花が動いていて幸せ……。そう思える作品です。とても幸せです……。

どーせ泣かせにくるんでしょう、と構えて見ていながら、開始10分ほどで涙腺が。「こんな清々しい表情しねえ!」だの「そんなセリフ嘘だし!」だのと心の中で汚くつっこんだりもしましたが、涙不可避。号泣してしまい終わった時には目が真っ赤でした。ただただ泣ける、という作品はいつもと違う神経を使うのでとても疲れます。しかし予想以上に新作カットが多くてうれしかった。

今だ解釈に悩んでおります。この何とも言えない感情を、あえて言葉にしない、という状態に今もいるので、とても語りにくい。

学園もの&バトルものとしてかなりテンションの上がる作品でした。続きがたのしみです。

  • 「しわ」

スペインのアニメ作品です。前のエントリで書いているので多くは語らず。機会があればぜひ見ていただきたいです。

  • 「パリ猫ディノの夜」

フランスのノワールアニメ。痛快でおもしろかったです。ふと、ディズニーアニメでは平面(横)の移動が多く、前後の描写はあまり得意ではない、といった誰かの言葉を思い出しました。この作品もキャラクターの移動は主に横。そういう部分を考えても、日本のアニメはヴァラエティー豊かだと実感しました。早稲田松竹で「しわ」と併映。先にこちらを見たのですが、それで正解でした。

AKIRA」の作画監督などを務めてきた名アニメーターなかむらたかし監督作品「冩眞館」そして、気鋭の若手、石井祐康監督作品「陽なたのアオシグレ」。池袋シネ・リーブルで同時上映されていたので見に行きました。「冩眞館」はサイレントアニメ。先日お笑いバラエティ「イロモネア」の再放送があり見ていて思いだしたのですが、ぼくは“サイレント”がとても好き。それは想像力をかきたてられるから。「これはこう言ってるんだろうな」「こう返して」「なんでそこでその顔(笑)」と心の中で楽しめます。観客といっしょになって作品を作り上げる感覚というのでしょうか。それもあって「冩眞館」はとても染みました。そもそもセリフの必要がないほどアニメーションが緻密に積み上げられており、月日の流れも実にうまく表現されています。アニメーションならではの定点観測と時間跳躍。さらには人物の心理をうまく想像させる喚起性。脱帽。思いもよらずこみ上げる涙を抑えられませんでした。「陽なたのアオシグレ」は一転、実に躍動感溢れた17分の短編アニメーション。スピッツの楽曲「不思議」とリンクする筋書きは少年の想像力とアニメならではの演出をふんだんに使い、「半径3メートルのスペクタクル」といった趣。個人的な好みで言えば、セリフ抜きのアニメーションが雄弁に語りかける「冩眞館」でしたが、若手である石井監督の作品も今後が実にたのしみです。藤津亮太さんのインタビュー(←リンクあります)によると、短編を作っていたい、とのことですが、ニーズがきっと長編を欲しているでしょうから、ぜひとも長編を見てみたいものです。それにしても「スタジオコロリド」、また要チェックなアニメスタジオが。

  • 「サカサマのパテマ」

イヴの時間」の吉浦監督最新作。佐藤順一監督のツイートに強く頷いた次第です。

鑑賞後もかぐや姫という女性の半生をしばらく考えていました。人生でこれほどかぐや姫について考えたことはありませんでした。多くの人に観ていただきたいし、その後いろいろと話し合いたい気分になります。先日の飲み会で同席させていただいた小川びぃさんが仰っていた「かぐやだけが、現代の価値観に生きてるんですよね」という言葉に超同意です。個人的にはそこがよかった。好きなカットは「裏の庭園の古里を再現したミニチュアを覗き込む、媼と、髪をアップにしたかぐや」です。

以上です。
改めまして、本年もどうぞ、よろしくお願いします。

※1/3に「冩眞館/陽なたのアオシグレ」を追記しました。