五色と二次の海につかる、日記

俳優/劇作家/アニメライターの細川洋平による日記・雑記です。

解散ライブは七夕の次の日

ついに明日、7月8日がやってきます。
BiSの解散ライブ。
寂しい。
いろいろ考えていましたが、はっきり「なくなってしまう」という事実は、
なくなってからじゃないと実感できないのでしょうか。

ライブがとても楽しかった。
曲がとても好きだった。
歌声が好きだった。

単純な思いでBiSは応援してきた気がします。
もちろん、ツアーを回ったり、女川商店街復幸祭に行ったり、
特典会に行ったり、どうぶつえん感謝祭に行ったり、
といったことの9割は行えませんでしたし、
その意味では、自分は在宅オタなんだと実感しました。
自分なりの応援。
それが間もなく終わってしまう。

なくなってしまうのはもったいないなあ。
「騙された気分はどうだい?」
パンク史に残る言葉を折に触れ使ってきたBiSですが、
最後のライブで、解散を撤回して、この言葉を言い放ってほしい。

という微かな希望を胸に、8日は横浜アリーナへ向かいたいと思います。

気になるバンド 赤い公園 インタビューまとめました。

赤い公園が気になってしょうがないです。
常に頭で鳴っちゃってます。
せっかくなので、赤い公園のインタビューまとめを作りました。

赤い公園
http://akaiko-en.com/
東京都立川市出身の女性4人バンド。
ボーカル・キーボード 佐藤千明(さとう ちあき・21)
ギター・コーラス 津野米咲(つの まいさ・22)
ベース 藤本ひかり(ふじもと ひかり・21)
ドラム 歌川菜穂(うたがわ なお・21)

若いです。
バンドリーダーの津野さんはSMAPへ「Joy!!」の楽曲提供を行うなどしております。

音楽にはまだこんなに発見があるんだな〜と聞く度に思わされるバンドです。
圧巻のライブパフォーマンスは、未見の方ぜひオススメいたします。

以下、自分が読みたかったインタビューをメディア毎にずらりとリンクしていきます。
こうしてみるとどのメディアも注目しているのがわかります。
タイアップやこうした取り上げられ方を見ても、今後がたのしみです。
下記のリンクではEMTG MUSICさんが動画コメントがあって、
ちょうど声も聞いてみたいなと思っていたのでよかったです。
また、CINRAのライター柴邦典さんによるインタビューもさすがといった切り口でした。

じっくり読んで、詳しくなっていこうと思います。

【ナタリー】
アルバム「公園デビュー」リリース時
http://natalie.mu/music/pp/akaikoen

シングル「絶対的な関係/きっかけ/遠く遠く」リリース時
http://natalie.mu/music/pp/akaikoen02

【NEXUS】
アルバム「公園デビュー」リリース時
http://www.nexus-web.net/interview/akaiko-en/

対談(山口一郎×津野米咲
http://www.nexus-web.net/interview/interview4/

【Lmaga.jp】
ミニアルバム「ランドリーで漂白を」リリース時
http://lmaga.jp/article.php?id=1557

【CINRA】
ミニアルバム「ランドリーで漂白を」リリース時
http://www.cinra.net/interview/2012/05/11/000000.php

おおたえみりインタビュー(津野米咲藤本ひかりが演奏で参加している記述あり)
http://www.cinra.net/interview/2013/08/27/000000.php

【ROCKFun】
アルバム「公園デビュー」リリース時
http://rockfun.jp/article_detail.php?category_id=1&id=230

【BEEAST】
ミニアルバム「ランドリーで漂白を」リリース時
http://www.beeast69.com/feature/25973

【WHAT'S IN?】
シングル「今更/交信/さよならは言わない」リリース時
http://www.whatsin.jp/feature/akaikouen-imasara

対談(亀田誠治×津野米咲
http://www.whatsin.jp/feature/akaikouen-special-2014-talking-a

シングル「風が知ってる/ひつじ屋さん」リリース時
http://www.whatsin.jp/feature/akaikouen-special-2014-interview-a

マイナビ
シングル「絶対的な関係/きっかけ/遠く遠く」リリース時
http://news.mynavi.jp/articles/2014/03/25/ak/

【CDJournal】
対談(赤い公園×アップアップガールズ(仮)
http://www.cdjournal.com/main/cdjpush/akaikouen/1000000945

タワーレコード
南波志帆赤い公園
http://tower.jp/article/news/2014/02/28/n06

bounceより2012年津野米咲コメント
http://tower.jp/article/interview/2012/05/09/b372/b372_01

ミニアルバム「透明なのか黒なのか」リリース時
http://tower.jp/article/interview/2012/02/15/b228

ミニアルバム「ランドリーで漂白を」リリース時
http://tower.jp/article/interview/2012/05/09/b372

【EMTG MUSIC】
ミニアルバム「ランドリーで漂白を」リリース時
(動画コメントが始まるので音声にはご注意を〜)
http://music.emtg.jp/special/2012040140228fc27

アルバム「公園デビュー」リリース時
(動画コメントが始まるので音声にはご注意を〜)
http://music.emtg.jp/special/2013080252431c97c

シングル「風が知ってる/ひつじ屋さん」
(動画コメントが始まるので音声にはご注意を〜)
http://music.emtg.jp/special/201402035738baca0

【ototoy】
対談(石田愛実(THE★米騒動)×津野米咲
http://ototoy.jp/feature/index.php/20120706

【JUNGLE☆LIFE】
ミニアルバム「透明なのか黒なのか」「ランドリーで漂白を」リリース時
http://www.jungle.ne.jp/sp_post/%E8%B5%A4%E3%81%84%E5%85%AC%E5%9C%92/

oricon style
シングル「絶対的な関係/きっかけ/遠く遠く」リリース時
http://www.oricon.co.jp/music/artistnews/page/988/

【NeoL】
対談(ハマオカモト×津野米咲
http://www.neol.jp/culture/okamotos

【MUSICA】
アルバム「公園デビュー」リリース時。チョイ読み(津野米咲インタビュー)→完全版は本誌で。
http://musica-net.jp/articles/preview/3679/

「諦められたアイドル:新生アイドル研究会BiSの場合」

BiSのマネージャーである渡辺淳之介さんがインタビューでこんなことを言っています。

ーーもう一回聞きますけど、本当に解散するんですか?
渡辺 : するする。
ーー3年もやっていたらBiSというグループへの愛着もあるでしょ。
渡辺 : ない。本当にないんだよな。自分でもビックリするんですけど、BiSっていう入れ物にはまったく興味がなくて。
ーーそれでも、過去を振り返ると、気持ちがぐわってならない?
渡辺 : 真面目な話、なくて。ぶっちゃけ。ぐわっとなるとしたら終われないことの方がなりそうですね。終われば終わったで泣いたりとかはあるのかもしれないけど。
ーー淳之介さんは解散後のことは考えているんですか。
渡辺 : アイドルをやっていてもおもしろかったんですけど、飽きっぽいんで、いろんなことをやりたいですよね。
ーーうーん。いまBiSはサブカル寄りのアイドルとしてはトップに並ぶ位置にいるわけじゃないですか。それを解散させるのは惜しいと思わないんですか?
渡辺 : ぶっちゃけ、それがBiSの限界かなと思っていて。
ーーそれをマネージャーが言っちゃダメでしょ。
渡辺 : いや、全然おもしろくないの。これは真面目な話、全然おもしろくないか
ーーそれは古参の研究員さんたちからも少なからず聞こえてきますよね。
渡辺 : 全然おもしろくないから、しょうがないでしょ。とはいえラストスパートは楽しませられると思いますよ。

BiSは解散に向けて、再びおもしろさを取り戻せるのか? 渡辺淳之介インタビュー/オトトイ)


マネージャーから諦められているアイドル。
それって、どういうことなんでしょうか。

BiSはとても好きなアイドルです。
だからあーだこーだと考えてしまいます。そして書き散らかしてしまいます。

そもそもこんなことを書こうと思ったきっかけがいくつかあります。
まず、話題になった全裸PV。そして相次ぐメンバーの脱退。音楽の方向性。ライブ現場の熱量。研究員。マネージャーのジュンジュン(渡辺淳之介)さん。チェキ会。握手会。仕掛け。オトトイの学校。

9月のZeppDiverCityTokyoでのワンマンライブを最後に、今のところBiSの現場には行っていません。いろいろあって単純に行けてないだけなのですけど。
初めてのBiS現場が2013年5月26日の「BiS48」。現在ソロアイドルとして活動している寺島由芙(当時テラシマユフ/通称ゆっふぃー)が同日お昼のライブ「BiS4」をもって脱退し、新メンバー3人を迎えた6人体制で新たにスタートを切ったライブでした。ほとんど作法もなにも知らないまま、ゆっふぃーが見たい!と思いチケットを応募するも「BiS4」は取れず、だったらBiS見るだけでも!と「BiS48」をゲットしたのでした。

以前にも書いたかもしれません。

モヒカンや多数のピアス、タトゥーがバリバリ入ったパンクスやキッズから、見た目普通の人々まで幅広い客層が会場のCLUB ASIAに集まっていました。ライブが始まると異様な熱気でモッシュやダイブ、リフトが頻出し、およそアイドルのライブとは思えませんでしたが、楽曲から入る分には、違和感はもちろんありませんでした。
メンバーの名前をコールする場所では、新メンが誰だかみんな知らない。だから「誰か!誰か!」とコールしていました(笑)。すごくオープンで開かれた世界だなと感動しました。今でこそ名曲「Primal.」のサビで嬉々として両手を挙げて後ろを振り返りますが、当時はみんなが突然後ろを振り返るさまを見て、驚いていました。

それから自分でもびっくりするくらい現場に通い(全通する人もいるので、そのレベルには全然足りませんが)、どんどんBiSのことが好きになっていきました。あと、研究員(BiSファンの総称)も。アイドルとファンが、ぶつかり合って、すごくいい空間・関係だなあと思いました。

そんな中で、BiSの歴史をネットであさるように集め、マーケティングやメンバーの脱退、BiSというグループに対するメンバーたちの言葉をインタビューなどで知っていくうちに、ふむ……、と思うようになりました。

BiSにぼくがものすごく惹かれたのは楽曲でした。『BiSimulation/Hyde Out Cut』がすごく、ものすごく好きで、しかもHyde Out Cutの方は、持病再発の体調不良で脱退するメンバー、ワキサカユリカ(通称ワッキー)のための曲だとか。脱退するがわかっているのにワッキーのソロパートまである。そこの物語性に胸を打たれました。
聞く度に、ワッキーのまっすぐな歌声に涙ぐむ日々でした。(現場に行く前です)


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ワッキーラストライブ。at 両国国技館

それから、ゆっふぃーが抜けるとツイッターで知り、あのエモーショナルな歌声を持っている子も抜けちゃうの?!と驚き、現場へ行こうと決意したわけです。
ゆっふぃーの脱退の理由というのは結局ぼくにはわかりません。メンバー内でうまくいかなかった、とか、ジュンジュンさんのマーケティング戦略について行けなかった、とか、そういう話をたくさん聞いたり見たりしました。いろんな話がでるということは何かがクリティカルに引き金となっているんじゃないんだな、という感じです。いろんな要素が絡まって縺れていったものが、いつの間にか全然ほどけなくなってしまった、みたいなものなのでしょう。

かねてから、ジュンジュンさんはBiSはプー・ルイのグループだと言っています。そして2014年に武道館公演をもって解散するとも。

ただ、事態は変わるものだし、たとえばもっともっと人気が出れば「解散」も撤回されるかも知れない。研究員のみなさんもおそらくそういう希望があると思いますし、ぼくもそう思ってライブに通っていました。
「どうぶつえん」(ファンクラブ)に入会し、どんな形であれ応援できたらしたい、と思っていました。

だけど気づけば足が遠のいています。

「どうぶつえん」でライブのチケットが手に入りやすくなりました。たとえば「どうぶつえん」先行販売されたシェルターライブ七日間通しチケット。Tシャツ付きで二万円。ZeppDiverCityTokyoのワンマン、限定グッツ付きのチケット、一万円、三万円。どうぶつえん限定イベント、一万円。ちょ、ちょ〜。太い客優待〜。なんだかそういうので、テンションをごっそり持って行かれてしまいました。いろいろ考えるとお得ではあるのかも知れませんが、金額が大きいんですよね。自分にもっとお金があれば違うんでしょうけど……。
先日のVILLAGE VANGUARDとのコラボ福袋もツイッターで賑わっていましたが、ひとつ五千円。当たりには限定ライブのチケット入り。買える人は当たるまで買い続けたようです。VV選定の福袋とのことで、内容物はそれか〜!という代物ばかり。もしチケットが当たらなくてももらってうれしいものだったら急いで買いに行ったかもしれませんが、やっぱりそこまでできない自分がいます。

ライブに行くまでの(精神的/金銭的)ハードルがどんどん上がってます。

個人的には、ライブのクオリティーを上げてもらい、先のでんぱ組のエントリで書いたように、パフォーマンスの精度をもっと上げて、照明などをタイトにしてくれたら、ぜったいもっともっといいライブになるし、お客さんももっと入ると思うんだけど、などと思っています。

BiSのパフォーマンスは、でんぱ組とは正反対の場所を目指しているものだと思います。
でんぱ組が、異世界(ポップカルチャーの一面)を見せるライブだとすると、BiSのライブは、現状を打ち破る衝動、を見せるもの、じゃないかなと思っています。
そもそも音楽のジャンルやアプローチするクリエイターがAIRJAMゆかりの人たち、90年代後半に若者を風靡したメロコア/メロパンの有名なアーティストです。それにBiS楽曲の屋台骨ともなっているサウンドクリエイター松隈ケンタさんの作る情動的な楽曲。それらは「規則やルール」に抗う力を持っている音楽です。だからファンたちにもそんな人たちが集まるし、ダイブもモッシュもする。BiSのメンバーたちに対しても、感情を爆発させる余地を残しているが故の、他のアイドルからするとちょっとゆるめの振り付けなのかなと思っています。振りもいいけどライブしよう、みたいな。古いですが、「戦う」場所がライブなのかなと。

「壊す」瞬間が見られるライブ、なんてゾクゾクするだろう。
全身全霊、というものが幻想だと思うなら、それでいいですが、もしそんなライブがあるなら、BiSでその、ぶっ壊れるくらい、ぶっ壊すくらいのライブというのを見ていたいです。それをたぶん、どこかに期待しながら、見に行っているのだと思います。ダンスで整列なんてしてる場合じゃないぜ!みたいな。
だけど、そうなるとスポットの位置も決められなくなるので、タイトな照明の部分は絶対にはずさず、その中で壊す、とか、以外の部分で、とかあったらすごい盛り上がるだろうなと思います。

最初にジュンジュンさんがBiSをすでに諦めている発言をしたインタビューを引用しました。
もう打つ手なしなんでしょうか。いや、『ラストスパートまでは楽しませられると思いますよ』と言っている以上、きっとそうなるんだと思います。じゃあ何?ぼくは何をBiSに求めているんでしょうか。

ジュンジュンさんのインタビューでもあるように、「アーティスト」と「アイドル」は全く違う存在です。平たくいえばアーティストは自分自身の哲学・美学に基づいて活動している人。アイドルはプロデューサー/仕掛け人の哲学・美学に基づいて活動している人。BiSがアイドルだというのなら、プロデューサー=渡辺淳之介の哲学に基づいて活動するほかないという事になります。現に本人がそう言っているのなら、BiSはそうである以外ない。

現在のBiSメンバーは、すでに出来上がっているBiSというイメージに自分がどう当てはまるか、それをまだ模索しているのではないかなと思います。(最近ライブ見ていないので全くの推測ですけど)。BiSという容れ物は2010年に出来上がり、アルバムを出した時に在籍していた5人、プー・ルイヒラノノゾミテラシマユフ、ワキサカユリカ、ミチバヤシリオの時点で、グループとして一度完成した。その後、容れ物だけを残し、メンバーは半数以上が入れ替わります。BiSはどこにあるのでしょうか。

BiS=プー・ルイであるなら、2014年に始動したバンド「LUI◇FRONTiC◆松隈JAPAN」はいったい何なのか、説明がつかなくなります。プー・ルイはBiSであり「 LUI◇FRONTiC◆松隈JAPAN」である。でも 「LUI◇FRONTiC◆松隈JAPAN」はBiSではありません。
ではBiS=渡辺淳之介かというと、それも違う。BiSを組織し、仕掛けた本人ではあっても、BiSそのものにはなれません。BiSとして表明することがジュンジュンさん個人ではできないからです。

それならBiS=楽曲では?これはしっくりきそうです。BiSという容れ物は楽曲が担っているものであって、メンバーの誰も担っていないのだ。そう考えると、今の現象はとても腑に落ちます。

BiSの振り付けはどうなるでしょう。
極論を言うと、全部変えてしまってもいいんじゃないのかな、と思っています。
現在のBiSメンバー、プーちゃんとのんちゃんを除いたメンバー(ファーストサマーウイカカミヤサキ、テンテンコ、コショージメグミ)が、BiSの過去の容れ物をなぞっていると感じているからこそ、自分の立ち位置やキャラクター、参加意識に悩んでいるのだとしたらですけど、全部ぶっ壊して、作り直せばいいじゃないでしょうか。

今までのBiSはそうしてきて、自分たちのものとして、アルバムを一枚作ったんだろうと思います。

だったら、誰かの代わりではなく、「そこに立つ」ために、壊して作り直すのがいいんじゃないか。もちろん簡単なことではありませんし、書くだけなら誰でもできますし、そんなことしなくてもいいかもしれません。だけど、もしメンバーが自分の存在に不安があったまま、ラストスパートに入ろうとしているのだとしたら、それってすごくもったいないことではないかなと思うわけです。

ステージに立つ以上、誰かに遠慮しながらなんてもったいないし、そういう部分はきっと伝わってきます。「BiSを見て!」じゃなくて、「BiSにいる私を見て!」というパフォーマンスが、内側からの爆発になるんじゃないかなと思います。

BiS最古参(TO)のtumaさんがツイッターで「現状映像が見られるBiSの最高のライブは赤坂BLITZだな」と言っていたので、慌てて調べました。ぼくは今まで見たことがありませんでした。え?それどこに入ってるの?
そしたら、『DiE』の初回盤に入っていました。ぼくが最もBiS現場にハマっていた時期で、映像を見るより現場へ!となっていたため、購入はしていたものの見ていませんでした。
今日やっと見ることができました。

ステージに立つBiSの5人。プー・ルイヒラノノゾミテラシマユフ、ワキサカユリカ、ミチバヤシリオが、「BiSを、私たちを、私を見て!」と全身で訴えているようで、とてもよかった。それから、ああ……、もう、このメンバーでは見られないんだな、とかおセンチになり、泣きました。

今のBiSでも、こんな全身で訴えるようなライブは見られるはず。そのためにどうなったらいいのかな、を頭ん中でコネコネ考えたのが以上の文章になります。

すごく長いわりにダラダラと、失礼しました。
ちょいちょい読みやすく修正などしつつ、更新していきます。

「すごくいいラストライブだった」と思えるように、ぼくも心構えや予習をまたして、それまでも行ける現場には行きたいと思います。

1月29日にリリースされる『STUPiG』はめちゃくちゃいい曲!PVも大好きです!


(↑サイズがうまく行かない……)

STUPiG (CD+DVD) (アニメ盤)

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「アイドルのステージング:でんぱ組.incの場合」

2014年ライブはじめは、でんぱ組.incのZeppDiverCityTokyoワンマンライブでした。

でんぱ組を見るのは初めてで、昨年頭に行っていたZeppTokyoでのライブに行けなかったのが特に悔やまれており、今回念願かなって、といった形での参戦となりました。昨年頭のライブというのはWWD発表直後に行われたライブで、レポなどでも見られるように、メンバー一人一人が自分の過去を語るMCを挟んだ上でのWWDという、非常にエモーショナルな演出で観客を魅了したと聞きます。

MARQUEEブログ参照
古川未鈴オフィシャルブログ『みりんに向かってBダッシュ!!』「ZeppTokyoワンマンについてくわしく」

今回は2ndアルバム『WORLD WIDE DENNPA』リリース記念の全国ツアーとのことで、東名阪(福岡)Zeppに加え、全国各地のライブハウスを回るものになるようです。ぼくが行ったのは1月5日。ツアー2日目でした。

決して同列には語れないでしょうが、舞台にも初日があり、千穐楽があります。初日というのは観客の反応がどうなるものなのか、未知数の中で行われるのでとても緊張します。演じていく中で、各パート、各シーンがどういう受け止められ方をしていくのか、演者にとっても発見に溢れています。2日目は、初日のリアクションを踏まえた上で進められるため、リラックスと緊張の程よい交わりの中で本番に臨めることが多いというのが実体験を経ての感想です。

でんぱ組も同じだったようで、メンバーがMCで「昨日は緊張してヤバかった」と言っていました。人前に出てパフォーマンスをする以上、緊張しないなんてことはありえないでしょうが、初日の緊張は他の日とはことなるものがあるのです。

ライブ自体はアルバムの曲を中心に、というか、ほぼ全曲パフォーマンスし、途中にその日担当のメンバー(1月5日はねむきゅん)のソロ曲が一曲入る、というものでした。
2階席にはイスがありましたが、1階はオールスタンディング。どうなるかな、と思っていましたが、想像以上にいいライブでした。

Zeppクラスでのアイドル・ワンマン・オールスタンディング・ライブをぼくは三度しか経験がありません。2013年9月のBiSと、2012年11月11日の私立恵比寿中学『ウィンターデフスター極上ツアー』第二部『文化祭』です。そのうち、エビ中のライブ中に、後ろのお客さんに強めの肘鉄を受けたことから「オールスタンディングライブのイヤな経験/イヤな会場」として記憶に残ってしまったのです。BiSはライブがパンク・メロコアなどのスタイル(ダイブ・モッシュが普通に起こる)なのでオールスタンディングじゃないと、と思っているのですが、サイリュームをきっちり振って、コールをちゃんとして、というライブでは、オールスタンディングは逆に怖いなあと思うようになってしまいました。特にすごくきっちり応援したい古参の前にもし自分が来てしまったら、中途半端な応援やコール、タイミングのずれたサイリュームというのは目障り(?)などと考えてしまうのです。もちろん、そういうことのないようにきっちり予習していけばいいんですけどね……。

でんぱ組のライブでもそんな心配をしつつ、それでも前の方で見たい!と思い、最前ブロックに行きました。すごくすごく楽しかった。おそらくぼくと同じく新規組が多く参戦していたからだと思います。古参の人と新規と、ほどよいブレンドになっており、コールも窮屈じゃないしサイリュームを振るタイミングもももクロほど「やべ!」とならない。予習というか、曲を聞き込んでいくことはもちろん前提にはなりますが、曲をちゃんと聞き込んでいけば、サイリュームを振るタイミングはわかってきます。
〈※ライブ会場で買った緑(ねむきゅんカラー)と赤(みりんちゃんカラー)のサイリュームは1時間も経たずに力尽き、最終的にはプラスチックの棒を振っているだけになりましたので、ペンライトでなく、サイリュームを用いる場合は各色三本くらいご用意ください〉

ちなみに冒頭で書きました、2013年1月22日のZeppTokyoワンマンで初お披露目された「ORANGE RIUM」では、文字通りオレンジのサイリュームが灯され、個人的にはももクロの「走れ!」の暗転中のサイリュームに匹敵する、ファンと会場と、メンバーが一体になった素敵な曲だと思います。オレンジのサイリュームは会場では最初に売り切れる色らしいです。前もって準備して行くことをおすすめします。

(↑DVDになっている大阪城野外音楽堂ライブので『ORANGE RIUM』。涙)

夢眠ねむオフィシャルブログ『ユメミる世界日記』「ワールドワイドでんぱツアー2013 in ZEPP TOKYO」

でんぱ組の曲はBPMが高いので、コケティッシュな振り付けも想定以上にはいやらしくならず、コミカルに昇華されます。時おりオタ芸を挿入したり、「でんでんぱっしょん」では新体操のリボンが取り入れられたり、次から次へと展開して行くダンスは見ていて全く飽きません。電波ソングに「でんぱダンス」。見ていてとても気持ちがいい。

どうしてこんなに気持ちがいいのか、ちょっと考えてみました。

【角度が揃っている】
当たり前なんですけど、6人の肘や腕、膝の曲げ方、ほぼ角度が同じです。揃える部分は揃える。基本でありながら達成されるにはそれなりの練習と意思疎通、共通認識が必要になります。

【速度が揃っている】
これも当たり前ですが、腕を回したり足を運んだり、それらのスピードが同じです。角度と同じく自分の速度と他のメンバーの速度を主観的、客観的に把握している必要があります。個人的にゾクゾク来たのは、ライブの一番初め、暗転中に6人が舞台袖からステージへ歩いてくる瞬間です。全員整列し、等間隔で足早にステージへ現れます。そこには、「照明が当たるまでアイドルははじまらない」「照明がついたらもう、後戻りはしない」という強い意志を感じ、胸が熱くなりました。そこまで気を配ってステージングがなされています。

ダンスが物語】
ダンスにそれほど詳しくないくせに書きます。ダンスにはいくつかの型があり、組み合わせることでレパートリーを増やしていきます。ぼくが知っているのだと、ボックス。くらいです(笑)。誰でも知ってるか……。ステップでボックス踏んで、上半身でこれをする、という形でダンスは組み合わされていくのだと想像しますが、歌に対する振り付けではそれと同時に、歌詞との符合という課題が出てきます。歌詞に合わせるのか、あえて無視するのか。歌詞の物語に則って振り付けるのか、多少歌詞を無視してでも曲調に合わせて踊るのか。振り付け担当の方の裁量によるとは思いますが、バランスがとてもいいです。立ち位置、移動、フォーメーション、マイム、いろんな方法を使って視覚的に「でんぱ組.inc」を伝えようとしているのが手に取るようにわかります。

おお〜、と思ったのは、BiSとのツーマン。ぼくは現場に行けなかったのですが、幸い『WORLD WIDE DENNPA』のDVD付き初回限定盤にBiSの「IDOL」をカバーしたライブ映像があり、その曲だけでも見ることができました。完全なでんぱアレンジ。イントロで、一人ずつ、一歩一歩進みながら指さしをしていく振り付けに鳥肌。そもそも「IDOL」はハードコア/レイブメタルな曲で、BiS楽曲の中でも無数のダイバーが発生するキラーチューンです。その文脈をも加味してのその振り付けか!という感動がまず生まれました。終盤での、円になってマイクを顔の高さに持ってくる振り付け。メリーゴーランド!ゆっくりと交互に上下していく6人は夢の中にいるかのようです。そして激しくヘドバンしていたかと思うと、ふとストップして目が覚めたような表情。そこここに表現/感情が溢れていました。それは「振り付け」でしかないかもしれません。本人たちは「そのように振りを踊っているだけ」かもしれません。それで十分。曲を曲以上に音楽として伝える彼女たちに、(しかもいとも簡単にやっているように見えます)深いため息が。

【歌がうまい】
ライブではみんな生歌なんですね。そして、うまい。下手ではない。ソロパート、各キャラが立っていて、すごくうまいメンバーがいて、突出して下手な人がいません。ぼくにはみんながうまく聞こえています。だから気持ちいい。

↑ライブを見ていて、いい!と思ったのはここら辺りです。

あとはスタッフワークもいいなあと思いました。照明が特に。6人がステージに立った時に、ちゃんとスポットが当たること、しかもかなりタイトな明かりであることはとても重要だと思います。照明は立ち位置やタイミングがきっちり決まっていないとバシッと作れません。こういう部分で臆せずスポットをバンバン使っているのを見ると、「すごい、作り込んでるなあ!」と思います。照明がぽわんとゆるいとどうしても視覚的にも印象的にもぼんやりするので、見ていてあまり感動しません。

初めてでんぱ組.incのライブに行きましたが、本当に行けてよかった。(東京ではZeppもソールドアウト。他の地域ではまだチケットあるそうです!)

サプライズで日本武道館公演が発表になりました。びっくりと感動と涙と、が入り交じる中、確かにもがちゃんは呆然とした印象でした。感動というより、戸惑いだったんですね。それはもがちゃんのブログに綴られておりました。

最上もがオフィシャルブログ『もがたんぺぺぺ』「暗い話」

ほんの一瞬、たった一時間半、同じ時間を過ごしただけのぼくには計り知れない苦悩や葛藤もあると思いますが、とにかく、とにかく、ひとつの通過点として、日本武道館公演を成功させてほしいなと思いました。そして、きっとパフォーマンス的には大丈夫なんだろうなと。あとは、集客。ここはもふくちゃんが!ぼくも行けたら行きたいです。

ちなみに2ndアルバム『WORLD WIDE DENNPA』はすごくいいアルバムですので、ぜひ聞いてみてください!

というところから、次のエントリではBiSの話へ。

2013年を振り返ってみるけど、総括とかはしないでみる。

あけましておめでとうございます。
昨年ご来訪いただいたみなさま、本当にありがとうございました。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

  • アニメ映画見たリスト2013

けっこう見たという実感もあるのですが、見られなかったものもあり。「劇場版 銀魂」などがいい例で、とても評判がよかったのになぜ見逃したのか、という。劇場で見たものをザッとリストアップし、簡単な感想も沿えてまいります。

  • 「AURA 〜魔竜院光牙最後の闘い〜」

2012年の「中二病でも恋がしたい!」大ラスのナレーションに悶々としてしまって、いろいろ調べていたら、「中二病」を扱った作品があると知り出会ったのが「AURA」(ガガガ文庫)でした。「人類は滅亡しました」の田中ロミオ著。原作に感動。劇場版も鑑賞。キャラクター原案はmebaeさん。mebaeさん独特のフェティッシュな雰囲気を出すのはそりゃ難しいだろうとは思いつつ、ストーリー、押さえる部分はしっかり押さえていて満足。原作同様中盤〜終盤の息も詰まるような展開がとても好きです。

「花咲く〜」はTVシリーズがキラキラ輝いており、かなり感情移入して見ていた作品でした。どうなるかと不安もうっすらあった劇場版も、フタを開けてみれば実に濃密でした。上映時間は70分弱。その中に様々なエッセンスが破綻なく丁寧に盛り込まれていました。緒花が菜子の代わりに泣き出すシーンで「お前が泣くなよ!(笑)」と心で突っ込みつつ感涙。「走り出す」っていいですね……。

新海誠監督最新作。こちらも60分の中編。いろはと同じく実に濃密な作品でした。「星を追う子ども」にいまいちピンと来なかったので、果たしてどうなるんだろうと思っていましたが、微妙にすれ違う心と心象風景としての新宿御苑の雨の描写がひたひたと胸に染みわたりました。改めて、「雨って美しいな」と感じられる国に生まれてよかったなあ実感しました。新海監督にはこれからも季節を描いていって欲しいなと思います。

  • 「ハル」

木皿泉脚本、WIT STUDIO制作ということでとても期待していた作品でした。各パートは盛り上がっていたし、ラストへ至る感情曲線の描き方もとてもうまいなと思ったのですが、いまいち乗り切れず。気のせいかも知れませんが、途中に出て来るキリンの像の縮尺がカットによってまちまちだったような……。そういうディテールが気になってしまったのと、キャラクターの描写がちょっとステレオタイプかなと。特に喫茶店でくるみが泣くシーンでは「ここでそういう泣き方はしないんじゃないかな」という気持ちが生まれてしまいました。全体で見ると間違いなく狙った(作品として正しい)演出だと思うのですが、違う選択肢で見たかったです。あーだこーだ考えつつも鑑賞後の満足度はけっこう高かったです(笑)。

3DCGすげえ!というのが率直な感想です。「スターシップトゥルーパーズ インベイジョン(STi)」もすばらしかったですね。ただ、STiハーロックでの大きな違いは、たぶんですが、無機質なものを描くか、有機的なものを描くか、という部分だったと思います。ハーロックは有機的なものをCGで描くということに果敢に挑戦している印象でした。また、世代的にネイティブで松本版ハーロックに憧れを持っていないので、上の世代の方々とは違う見方になっているだろうとは思います。

宮崎駿監督は本当に引退してしまうんでしょうか?

第一章はDVDで。第二章は劇場で。TVシリーズとは監督も脚本も違う、だけど見事にコードギアスでした。CGとなったKMFが動く動く。カメラワークも非常にアクティブになり、ロボットアクションものという観点でも実に満足のいく作品でした。そして何と言っても「コードギアス」の名を冠するからには、な展開が。第三章はよ……はよ……。

凸守と六花が動いていて幸せ……。そう思える作品です。とても幸せです……。

どーせ泣かせにくるんでしょう、と構えて見ていながら、開始10分ほどで涙腺が。「こんな清々しい表情しねえ!」だの「そんなセリフ嘘だし!」だのと心の中で汚くつっこんだりもしましたが、涙不可避。号泣してしまい終わった時には目が真っ赤でした。ただただ泣ける、という作品はいつもと違う神経を使うのでとても疲れます。しかし予想以上に新作カットが多くてうれしかった。

今だ解釈に悩んでおります。この何とも言えない感情を、あえて言葉にしない、という状態に今もいるので、とても語りにくい。

学園もの&バトルものとしてかなりテンションの上がる作品でした。続きがたのしみです。

  • 「しわ」

スペインのアニメ作品です。前のエントリで書いているので多くは語らず。機会があればぜひ見ていただきたいです。

  • 「パリ猫ディノの夜」

フランスのノワールアニメ。痛快でおもしろかったです。ふと、ディズニーアニメでは平面(横)の移動が多く、前後の描写はあまり得意ではない、といった誰かの言葉を思い出しました。この作品もキャラクターの移動は主に横。そういう部分を考えても、日本のアニメはヴァラエティー豊かだと実感しました。早稲田松竹で「しわ」と併映。先にこちらを見たのですが、それで正解でした。

AKIRA」の作画監督などを務めてきた名アニメーターなかむらたかし監督作品「冩眞館」そして、気鋭の若手、石井祐康監督作品「陽なたのアオシグレ」。池袋シネ・リーブルで同時上映されていたので見に行きました。「冩眞館」はサイレントアニメ。先日お笑いバラエティ「イロモネア」の再放送があり見ていて思いだしたのですが、ぼくは“サイレント”がとても好き。それは想像力をかきたてられるから。「これはこう言ってるんだろうな」「こう返して」「なんでそこでその顔(笑)」と心の中で楽しめます。観客といっしょになって作品を作り上げる感覚というのでしょうか。それもあって「冩眞館」はとても染みました。そもそもセリフの必要がないほどアニメーションが緻密に積み上げられており、月日の流れも実にうまく表現されています。アニメーションならではの定点観測と時間跳躍。さらには人物の心理をうまく想像させる喚起性。脱帽。思いもよらずこみ上げる涙を抑えられませんでした。「陽なたのアオシグレ」は一転、実に躍動感溢れた17分の短編アニメーション。スピッツの楽曲「不思議」とリンクする筋書きは少年の想像力とアニメならではの演出をふんだんに使い、「半径3メートルのスペクタクル」といった趣。個人的な好みで言えば、セリフ抜きのアニメーションが雄弁に語りかける「冩眞館」でしたが、若手である石井監督の作品も今後が実にたのしみです。藤津亮太さんのインタビュー(←リンクあります)によると、短編を作っていたい、とのことですが、ニーズがきっと長編を欲しているでしょうから、ぜひとも長編を見てみたいものです。それにしても「スタジオコロリド」、また要チェックなアニメスタジオが。

  • 「サカサマのパテマ」

イヴの時間」の吉浦監督最新作。佐藤順一監督のツイートに強く頷いた次第です。

鑑賞後もかぐや姫という女性の半生をしばらく考えていました。人生でこれほどかぐや姫について考えたことはありませんでした。多くの人に観ていただきたいし、その後いろいろと話し合いたい気分になります。先日の飲み会で同席させていただいた小川びぃさんが仰っていた「かぐやだけが、現代の価値観に生きてるんですよね」という言葉に超同意です。個人的にはそこがよかった。好きなカットは「裏の庭園の古里を再現したミニチュアを覗き込む、媼と、髪をアップにしたかぐや」です。

以上です。
改めまして、本年もどうぞ、よろしくお願いします。

※1/3に「冩眞館/陽なたのアオシグレ」を追記しました。

すっきりさせてはいけない。/スペインアニメ映画「しわ」を見る

なんてものを見てしまったんだろう。

早稲田松竹で上映していた「しわ」を見たときの率直な感想だ。

「しわ」はスペインのイグナシオ・フェレーラス監督によるアニメ作品で、スペインのアカデミー賞と呼ばれる第26回「ゴヤ賞」において「最優秀アニメーション賞」「最優秀脚本賞」を受賞した。

原作はスペインの漫画家・パコ・ロカの「皺」。こちらも第15回文化庁メディア芸術祭マンガ部門で「優秀賞」を受賞している。

フェレーラス監督は日本のアニメーションから多くのものを学んだと語る若手実力派アニメーターで、1972年生まれ。40過ぎの監督。若い。(参考:三鷹の森ジブリ美術館公式サイト

「しわ」は三鷹の森ジブリ美術館の配給で日本公開された。

そもそも三鷹の森ジブリ美術館では、宮崎駿高畑勲両監督の薦める世界の名作を取り上げたり、まだ知られぬ世界の名作アニメを日本に紹介する活動を行っている。

日本初の本格的なアニメーション美術館である三鷹の森ジブリ美術館は、「世界の優れたアニメーション作品をもっと多くの人に知ってもらいたい」という理想のもと、企画展示という形で世界のアニメーション作家やスタジオを取り上げてきました。

しかし、宮崎駿館主が、「アニメーションは一幅の絵を見るように、一画面を額に飾って云々するものではなく、動いてこそ価値がある。」と言うように、展示やイベントにとどまらず、アニメーション作品を映像として紹介していくことも必要です。

こうして、劇場公開とDVD化を2本柱として“三鷹の森ジブリ美術館ライブラリー”の活動は始まったのです。

三鷹の森ジブリ美術館ライブラリーについて

「しわ」がどうして三鷹の森ジブリ美術館の配給となったのか。それはフェレーラス監督の働きかけによるらしい。

フェレーラス監督が高畑勲監督の大ファンで高畑監督に見てもらうために、日本語字幕版を製作し送ったことだったという。

まんたんウェブ・イグナシオ・フェレーラス監督インタビューより)


自分から働きかけることで何かがはじまる。なんにしろ、自分から動かないかぎり、はじまらない。(というのは自戒を込めつつ)


さて、肝心の内容。
老人介護施設で過ごす老人たちの物語だ。中でも中心人物のエミリオは認知症を発症しつつある老人。同室で生活することになったやや胡散臭いミゲルや、友人となったアントニアらと日々を過ごしていく。

ぼくたちは認知症となった人から見える景色をハッキリと捉えることができない。自我がどうなっていくのか、どの時点から記憶が抜けていくのか、過去の混同はどのように起きるのか。それはほとんどが、他人の事象としてしか認めることができない。(たとえば久しぶりに会いに行った祖父・祖母に、お世話係の人と間違えられたりすること)

内的体験として得ることができない感覚を、「しわ」では、その全てでないにしても疑似体験させてくれる。

エミリオが初めて施設に訪れたとき、描写は小学校時代のエミリオが、転校生として教室を歩き、同級生たちに奇異の目を向けられる。感覚的な共有、記憶のリンクがそうして描かれるのは、多少大げさかも知れないが、衝撃的だった。

終の住処、そこに立ちのぼる空気は、どちらかといえば、閉塞的だ。
介護施設を舞台として、老人を描く作品となれば、暗く重くなる、そう予想しがち。だけど、「しわ」はそうではなかった。
人が生き、誰かと言葉を交わす限り、そこにはかすかにでも「喜び」が生まれ得る、そういっているようだった。

ユーモアを交えたカットもそうだが、語りすぎない演出も秀逸。

記憶というものはいったいどこへ行くのだろう。

数年前から個人的に直面している問題として興味深く見られたし、誰しもが今後、そうなっていく問題として、「見る/見ない」の二つの選択肢しかないのであれば、「見る」べきだと思う。

ただ、「しわ」はお涙ちょうだいの感動作ではない。
たとえば「泣く」作品ではない。鑑賞中にそう思ったのは事実だ。
「泣く」ことで、何か整理のつかない感情が体から流れ出てしまう、そう思った。
すっきりさせてはいけないんだと思った。
もし、自分がエミリオだったら、泣かれるのは悔しいことだろう。
これは「受け容れる」作品だ。
涙を流すというものは、作品の内側にいる人間だけに許された行為なのではないか。

映画や演劇で、ラストは救いがあった/なかった、というようなことをいうが、
「しわ」はいったいどうだったのか、わからない。
それこそ現実と混同しているのかも知れないが、
「ラスト」がいったい何にあたるのか、わからない。
映画の締めくくりなのか、それとも、彼らの往生の時なのか。
そもそも、「ラスト」なんて言葉自体が不適切なのかも知れない。
続いていく人生の中で、身近に訪れる出来事をどう捉えていくのか、
これから訪れる出来事にどう取り組んでいくのか。
そのことを考えるきっかけになる、すばらしい作品だった。


個人的に、幼少期にペルー(スペイン語圏)に住んでいたこともあり、
スペイン語の響きが、ふしぎな感覚をもたらしていた。
記憶はいったいどこに行くんだろう。
記憶はどこにあるんだろう。


貴重な映画体験だった。



最近『フリクリ』を見たのであんまりネタバレしてない感想を書いてみます。

またしても最近見ました。

今期『キルラキル』で活躍されている今石監督も参加されていた『フリクリ』に関して、メモ的な感想を書こうと思います。またしても当時のレビューや感想を参考にしておりませんのであしからずです。

まず、『キルラキル』は『天元突破グレンラガン』や『パンティー&ストッキング』などを手がけたチームによる新作で、GAINAXから独立した方たちが立ち上げたTRIGGERという会社のTVシリーズ第1弾です。
脚本は劇団☆新感線中島かずきさん。ぼくは(いちおう現在も)俳優もやっており、妙な(そして一方的な)親しみがあります。『髑髏城の七人』好きです。

キルラキル』の感想はまた機会があれば。

フリクリ』は2000年の作品。個人的な感覚では2000年って最近なんですけど、もう13年前なんですね……。光陰矢如也。『ふしぎの海のナディア』で初めてGAINAXを知ったぼくはその後の『エヴァンゲリオン』できっちり衝撃を受け、GAINAXに行けばこんなすごい世界が作れるんだ、と考えていたこともありました。
ですが、大学に入学してから演劇漬けになりアニメを見なくなりました。この時期がちょうど『彼氏彼女の事情』『フリクリ』と重なります。
エヴァのブームはまさに社会的でしたから、その後、アニメ誌だけではなく、ファッション誌にもアニメ(ほぼエヴァ)を取り上げるコーナーがあったりしていました。
フリクリ』もその文脈から知りました。『the pillowsが主題歌を担当』『エヴァを作ったあのGAINAXが制作』『おしゃれ』というキーワードが目に付いた記憶があります。

  • 舞台俳優が声優を

彼氏彼女の事情』で劇団ナイロン100℃新谷真弓さん、劇作家/小説家として今活躍している本谷有希子さんが声優として参加し、ぼくの周辺でもそれは「すごいねえ」と話題になっていました。『フリクリ』でも、引き続き新谷さん、遊園地再生事業団宮沢章夫さん主宰)などに出演されている笠木泉さん、大人計画松尾スズキさん、ナイロン100℃大倉孝二さんなどが参加されています。

  • もし難解とするならば

しばしば、作品が難解だという意見を目にします。実はキャスティングからもそれは導き出されているんじゃないかなと思います。というのも、声優さんの演技はご存じの通り俳優のそれとは似て非なるもの、言ってしまえば全く別です。深く触れなくともここら辺は数多く論じられているので十分共有できている事項かと思います。
フリクリ』は、テンポがよくスタイリッシュなカット割りや痛快なアクションでひたすら「すごいなあ」と思わせてしまう作品ですが、漂う『浮き世離れ感』は、天才的な作画陣や、少女革命ウテナスタードライバーを手がけた榎戸洋司さんのシナリオから立ちのぼるだけではなく、耳慣れた『アニメ的な演技』が『ない(あるいはあまりない)』からだなと思った訳です。
身体言語は使われず(アニメですから)、音声のみで感情を伝えるという演技方法がとられていない分、ある種抑制の効いたセリフたちは『セリフ以上の意味を宿す』ことになります。
たとえば『怒りのセリフ』をアフレコの技術で演じられたものと、身体(表情やしぐさなど)を通して語られるもの。その二つの情報伝達量は同じであっても、周波数のような部分が異なります。つまり『声』『体』『表情』と、三つの周波数の内、アニメで伝わるのは『声』の部分だけ。『体』と『表情』の周波数はカットされてしまうわけです。
すると『怒り』を声だけで『10』伝えられる演技と、『3』ないしは『4』(もっと多いこともあるかもしれませんが)、つまり『9』以下の演技では『怒り』の伝達量が変わってきます。人間(視聴者)が他者の感情をどのような場合でも合計『10』で受け取るのであれば、『10』に達していない怒りのセリフは『怒り』ではない感情で補完されてしまう場合も出てくるわけです。その余白の部分、それが、今作をさらに難解にしているんじゃないか。そんな印象を持ちました。

もちろん、それだから『いい/悪い』を論じているわけではなく、だからこそ、『フリクリ』には独特の空気感が宿るわけです。

  • 物語の軸を3本用意してみる

アニメ評論家の藤津亮太さんが開催されている講座『アニメを読む』で今夏、『フリクリ』が取り上げられて、その時藤津さんがツイッター『人に軸を置いて見るとすっきりする』というようなことを呟かれていたのを記憶しています。ぼくはその講座に参加しておらず、その言葉を念頭に置いて、今回視聴しました。

タッくん(ナオ太)とマミ美とハル子。それぞれの物語として見ると確かにギミックに目を奪われずに比較的すっきり見られました。

  • タッくんの失恋の話

兄の元彼女に付きまとわれ、相手をしているけど、自分には別に好きな人ができる。年齢差から来るコンプレックスにより大きく踏み出すこともできず、結局失恋してしまう。ナオ太の『この町からでることもなく』といったセリフから、ふと『惡の華』を連想しました。パッと見全然関連ありませんが。

  • マミ美の自立の話

海外に去ってしまった彼氏を忘れられず、面影を弟(ナオ太)に重ねている。けれども結局ハル子に心をよせていくナオ太を追わず、一人姿を消す。

  • ハル子の話

行動原理が物語の転がり方としてはおもしろいけど理解するのは難しい。ハル子は、自分の望みの為にナオ太を利用している。ナオ太を町から連れ出さず、ある存在を追って地球を去る。

  • こうしてみると

並べてみると、三人の自立の物語とも見えます。その場に留まることは依存すること。解き放たれたときに人は旅立っていく。そうして考えると最終話の最後、(年齢的なこともあるけど)町に留まっているナオ太は、やっぱり誰かに依存しているのかも知れません。最後の自動販売機前のシーンで、マミ美とかつてしたように、同級生とジュースを回し飲みしようとしているところからも。

  • 作画がおもしろい

とにかく頭おかしいんじゃないか、というくらい、作画が凝っています。凝っているというか、おかしいというか。スタッフは鶴巻和哉(監督)、庵野秀明貞本義行平松禎史摩砂雪今石洋之磯光雄吉成曜などなど。固唾をのみそうな面子です。第1話(第5話(?)にも)のコミック風のシークエンスもびっくりしました。

  • おもしろすぎてかえって見えてくる難しさ

作画がとにかくすごくて眼福でした。同時に見えてくるのは、ギャグとシリアスの切り替えの困難さ。もしくは世界観のルールの部分です。
フリクリ』には「このノリの時はギャグ、じゃないときはストーリーテリング」という明確な線引きがない為、どのカットも同じテンションで見てしまい、視聴者側からの情報の取捨選択は難しくなるのかなという印象です。それが読み解きづらい部分でもあると思います。とはいえそもそもが『読み解かれる』ために作られていないでしょうから、そこは純粋に楽しんだ方がいいのだろうと感じました。

セリフのある、長い長いPVと考えるとすっきるすることもあるかも知れません。この関連に関してはまた、別の機会に。

  • アニメのディレクターズレーベル

しばしばクリエイターが(昔ですけど)『ディレクターズレーベル』(海外のPV作品集)を参考にしていたりするように、『フリクリ』にも発想のカギがゴロゴロと転がっています。何かに詰まったときや、頭を解したいときにはボケッと見たい作品です。
ちなみにディレクターズレーベルは先日の宮地昌幸監督のトークイベントでも言及がありました。スパイク・ジョーンズミシェル・ゴンドリークリス・カニンガムアントン・コービン、マーク・ロマネックなどの世界的なクリエイターの映像作品集。ぼくもいくつか持っています。一見の価値あり、オススメです。

  • 余談ですが、大倉さんの声

アマラオ役の大倉孝二さんの声、清川元夢さんを若くしたような声だなと思いまして、ちょっと興奮しました。

  • 海外で評価が高い

ここはさっきWikipediaで見ました。海外で評価が高い理由って何だろうと考えて、一つ思い浮かんだのは、ゲームです。
今年、日本ゲーム大賞2013で『ゲームデザイナーズ大賞』を受賞した『The Unfinished Swan』。真っ白な画面に黒いペンキ玉を投げていくとペンキが広がり、風景が浮かび上がる、という前衛的なゲームです。あるいは『ICO』『ワンダと巨像』『風ノタビビト』といった、クリエイティブで意欲的な作品というのは海外がものすごい熱狂します。FPSパズルゲームPORTAL』もしかり。既存の枠を飛び越えるような作品に対して大歓迎の土壌ができているからこそ『フリクリ』もまた、大いに受け容れられたのかなと。プレイヤー、視聴者に様々な発見がある作品。

何層にも用意されたギミックは見る度に新しい発見がある。物語の成分を感受する楽しみとは別で、目の前に繰り広げられる出来事を楽しむというのも、いいなあと思わされる作品だなと感じた次第です。

フリクリ』に関してはこの辺で。

フリクリ FLCL Blu-ray BOX (PS3再生・日本語音声可) (北米版)

フリクリ FLCL Blu-ray BOX (PS3再生・日本語音声可) (北米版)

↑海外版には鶴巻監督のコメンタリーが収録されているそうです。